●8月21日

出発は午後11時過ぎなので、仕事を3つこなしても時間が余った。
池袋から普通料金+指定席券で乗れる快速列車で新潟に向かう。
列車は昔の特急列車の車両を使っていたが、座席も内装も新しくなっていた。
新潟県に入ったあたりから冷房が効かなくて、めちゃくちゃ暑くなってきた。車掌は故障とか言ってたけど、後で別の人から聞いたところ、女性専用車両の二人の頭の悪そうな女が寒いとか言ったので、そいつらの為に冷房を切ったことが判明。上越方面に来るなら上着くらい持って来いや!このボケ!
馬鹿の言いなりになる車掌にも困ったものだ。


●8月22日

4:50に新潟着。
4:55 村上行快速
5:56 酒田行
8:18 酒田着




ここ酒田から秋田行各駅列車で出発するはずだったのだけど、土砂降りの雷雨で、時間になっても出発しない。定刻を一時間過ぎたあたりで、「不通のため、バス輸送する」というアナウンスがあり、私達はJRの手配したバスに乗り込んだ。

酒田駅のロータリーを出ると道路が冠水していて、タイヤの小さい普通車は止められていた。改めて集中豪雨の凄さを知る。


秋田方面に向かいながら車窓から見る川は、どれも濁流の様相を呈していた。夏休みの子供達が流されていないかと心配になる。

乗ったのは秋田まで直行であったはずなのに、途中下車の客が混じっていて、しかも馬鹿女子学生のそいつらは、どこで降りたいのかもはっきり言わない。車内に怒号が飛び交う。


そうこうしているうちにバスが秋田に近付く頃には、道路は乾燥していて雨の降った様子も無い。本当に集中豪雨だったようだ。到着した秋田駅はカンカン照りであった。
本来なら秋田で3時間の列車待ち合わせであったが、着いたのは発車一時間前であった。丁度いいから大好きなキリタンポ鍋を食することに決定。

ところで、酒田駅で笑ってしまうくらい酷い土砂降りと落雷の中でホームで座っていると、同じくらいの年齢の女性に話し掛けられた。同じく青春18きっぷで初めて一人旅するのだそうな。
僕が五能線を旅行すると言ったら、私も行きたいとか言いだした。しかし快速列車は全席指定だし、彼女は時刻表も持っていないという行き当たりばったりだと言うので、スカスカの五能線時刻表を見せた上で、時刻表を貸して指定席を取らせた。
わりと話の合う人だったので、バスの中ではお隣同志。秋田駅では一緒にキリタンポ鍋を食べに行った。
ここまでは良かったのだけど、僕が今夜予約してある同じ宿に泊まろうかしら、とかいう話になってきたので、話が怪しい方向に行く前に距離を置くことにした。
指定席の客車も違っていたので、乗る時に「じゃねー」と言ってサヨナラした。


14:10 秋田出発

なんと!先頭車両の一番前の席であった!ラッキー!ヤッター!

左に八郎潟を見ながら、見渡す限りの稲穂の中を奥羽本線を走って行く。



そして東能代からいよいよ五能線に入って行くのだ。そこでハっと気付く。なんとここからは前後反対方向に走るのだ。僕は一番後ろへと転落してしまった。とはいうものの、最後尾には誰でも出入り自由の展望ラウンジが付いているので、撮影には不自由しないのだけどね。


白神山地と日本海の間の僅かな土地に、線路と国道と僅かな集落。

そして日が傾いてキラキラと輝く海。
時折列車は景勝地で速度を落とし、そこに車掌のアナウンスが流れる。流石は人気の観光路線だけのことはある。








































17:16 鰺ヶ沢着

ここから先は内陸部に入ってしまうので、今回の旅はここを限界とする。
お岩城山の麓の町の駅前旅館。まだ時間的に早かったので散策することにしたけど、すぐに海に出てしまった。
遠くに陸地が見えるので、


その辺で釣りをしているオッサン達に「あれは津軽半島?」と尋ねてみたら、殆ど解読不明の言葉で津軽半島であると言われた(笑)
しかし後で調べたら、遠くに見えた山は北海道の山であった。いい加減な地元民である。

そうそう、舞の海関の生まれ育った故郷であった。
舞の海と岩木山はこの町の誉れである。
カメラだけを持ってブラブラ歩いていたら、舞の海の一学年先輩だという人が、舞の海の実家の場所を教えてくれた。頼みもしないのに(笑)




●8月23日

駅前旅館の僕の部屋の窓から見えたのでパチリ!
朝六時台の列車に乗り込む高校生や社会人。
これを逃すと10時台まで来ない〜(汗


朝食時に、大正時代の旅館写真を見せて貰った。
  女将 「昔は鳩がいっぱい留ってたのねえ」
  さつ 「いや、これはどう見てもカモメですけど」
  女将 「あらホントだ。生まれてからずっと鳩だと思ってたのに」
この駅前旅館のトイレは、おつりが貰える仕組みになっている。

さて昨夜悩んだ末、本日の予定を変更。
最初は五能線沿いの景勝地の駅を何か所かで降りて、絶景を楽しんだり撮影したりと思っていたけど、昨日その景勝地が何時間も過ごすようなものではないことが判明。それよりも岩木山の麓にあるミニ白神という自然を体験できる施設とツアーがあるというので、それに参加することにした。

しかしツアーまでは時間がたっぷりあるので、再び鰺ヶ沢の散策に。
この町にはスズメも鳩も姿が見えない。


カモメだかウミネコだか分からんけど、思いきり目つきの悪い鳥が我が物顔に振舞っている。
物欲しそうなのが一羽、すぐ目の前に居座ってる。
オメー達に食わせるタンメンは無ぇ!
駐車場を占領した鳥の合間を、車が申し訳なさそうに除けて通る。



数日前までトライアスロンをやっていたという浜辺は、もう殆ど人の姿が見えない。

イカ釣り船の夜空を明るく染めるランプが印象的だ。

でも、これって余計なお世話かもしれないけど、反射板を上に付ければもっと明るく省エネになるんじゃいないだろうか?

舞の海をきっかけに作られたスモカと呼ばれる相撲博物館。無料にしては見応え十分であった。





リゾートしらかみを降りた客を待って、ミニ白神ツアーに出発。60歳くらいのガイドさんが付いてくれた。

世界遺産になった白神のブナ林は、一般人は踏み入れることはできないけど、ここではその世界を垣間見ることができる。


ブナ林の生態についていろいろ教えて貰った。
・クマゲラによって無数の穴が開いたブナが自然に倒れ、その上空に開いた空の見える穴から日が差し込むことによって、若いブナが生育する。


・樹齢250年のブナは、約8トンの保水量があるそうな。実際に聴診器を当ててみると、ザーという音が聞こえるし、幹に触れると他の木よりも冷たい。


・ツキノワグマの爪痕。しかも木登りは得意だそうな。


毒々しい色をしているけど、タマゴダケは食べられるそうな。





他のは知らん!最初に食べた人は偉い!
一周1kmくらいの散策コースだったけど、ガイドさんの案内でとても楽しく勉強になった。
西に日が傾いた頃にお開き。


海岸の露天風呂で全国的に有名な不老不死温泉に向かう。








シーズン中は予約でいっぱいと聞いていたけど、この日だけはシングルに空きがあった。鰺ヶ沢では「よくこの季節に取れましたね」と驚かれた。恐らくキャンセルがあったのだろう。


僕の部屋からは海も露天風呂も見える♪


男性用は丸見えで裸の真ん中あたりに黒いボカシが入っているのもよく見える(笑)しかし女性用は見えない(怒)

現在17:45。日没の予定は18:25-18:30ということで、少し早いけど露天風呂に行ってみよう。
お湯が(;´д`)ゞ アチィー!! ホースで水を入れないと茹で上がってしまう。


7-8人の客がいたけど、みんな肩まで入ってもすぐに出てしまっていた。
ここに来たら露天風呂に浸かりながら夕陽を眺めるのが王道なのだ。僕は淵の段になったところに腰かけて、下半身だけ浸かりながらその時を待った。が、早く来すぎたので、逆上せそうだ。

錯覚だと思うけど、波が目より高く見える。それほど湯面は海面に近い。
角度にしてあと1-2度というところで後ろを振り返ってみると、男性客で溢れ返っている。湯に浸かっているのは20人位で、あとは浴衣を着たままで夕陽を見ている。脱衣籠の数が足りないので、そこでボケっと見てるしかないようだ。こうなったら熱いけど最後まで見届けてやる〜。
そして日没。
客の間から拍手が起こる。見事な夕焼けであった。
残念だけどカメラの持ち込みは禁止されているので、夕陽の写真は無い。その代わりに部屋に戻ってから一枚パチリ。


夜中に目覚めたら北斗七星と天の川が目の前に。遠く水平線の向こうにはイカ釣り漁船の集魚灯が夜空を明るく染めていた。



●8月24日

今日は五能線沿いにある「十二湖」へ行く。直通のバスが出ているそうなので、本日は鉄道を使わない。
海から数キロ離れた山が大きく崩れて、30以上もの大小の池ができたそうで、山の上から見ると十二の湖の見えるということから、この名が付いたそうな。白神岳の麓のあたり。

朝食後、バスの時刻までヒマだったので、露天風呂と内湯の両方に入ってみた。
錆び色の温泉はやはり熱い!(52.2度) 口に含んだら塩っぺぇ〜!

なんだか肌がピリピリするので、せっかくの温泉の成分をきれいに洗い流してから出ることにした。


快晴!気温がグングンと上昇するのが分かる。風が吹いているのが幸いだが、今日はどれくらいの歩きになるんだろ?


直通バスかと思ったら、地元の乗り合いバスだった。途中で地元のばっちゃんやじっちゃんが乗降して行く。
JR十二湖駅で大勢の観光客が乗ってきた。海沿いの国道を離れ、十二湖の一番奥で終点。どこからこんなに出てきたのかと思うほど人が多かった。山歩きのガイドさんの料金表を見たら、4時間で12000円。高いとは思わないが、自分のペースで歩きたかったのでパス!


十二湖の最大のハイライトは「青池」
一日の中で一番美しく見えるのは、日光が射し込む昼前後なのだそうだ。そういえば今は11時過ぎ。






本当に青かった。五色沼で見た青さとも異なる。どこかで見たなと思ったら、中国のナントカとかいう観光地の池に似た青さだ。
見上げると雲が多くなってきたので、日光の加減によって、湖面が刻々と変化する。


どうも観光客の殆どは、この青池とブナの原生林を見る短いコースだけが目当てのようで、外回りの長いコースに一歩踏み込んだとたんに人は消え、道はあるんだか無いんだか(笑)
誰もいない場所から見る青池もまた美しい。


歩き出して見ると、殆どが日の届かない木陰なので、林間を吹き抜けてくる風が心地好い。
ところどころ道が怪しくなっているところもあったが、誰も通らないので聞くわけにもいかず、熊が出たらどうしようなどと心細くなりながら歩き続ける。しかも重いカメラの入ったリュックを背負ったまま。



汗が噴出してくる。ペットボトルに水が少ししか入っていないことを思い出した。やべー!


誰もいないので、いくつもの湖水の眺めを独り占めであった。ただし、立ち止まるとたちどころにやぶ蚊に襲われるので、ゆっくり休む間が無い。熊の血を吸ったかもしれない蚊に吸われてたまるもんか!



う○こしたくなった。しかしこんなとこでケツ出していたら、僕のかわいいお尻はたちまち蚊の餌食になってしまう。

水を全部飲み干してしまったところで、人の通る道に出た。地図によると、その先には「名水センター」と書いてある。きっとそこに行けば名水が飲めるのだろうと思って行って見ると....
ゲストルームらしい入り口は閉まっている。トイレ行きた〜い!水くれぇ〜!

人の気配がするので、別の入り口を開けてみると、小さな玄関だった。トイレをお借りして出てきたところで、真っ白な無菌服のおじさんに「名水センターって、飲ませてくれるとこかと思いました。」と言ったら、冷蔵庫からペットボトルを出してきて、冷えた水を飲ませてくれた。これは旨い!硬くも無く柔らかくもなく。
聞けばここは白神の名水の工場であった。お礼を言って出ようとしたら、別のおじさんが製品を一本持たせてくれた。お金を支払おうとしたけど、受け取ってくれなかったので、ありがたく頂くことにした。その思い出のペットボトルは、まだ飲まずに冷蔵庫に入れてある。


更に歩いて行くと、渓流の水呑場があったので、そこで空のペットボトルを満たした。すくって飲んでみると、さっき飲んだ名水の味であった。上流で熊がおしっこしたかもしれないけど、気にしない。


道沿いの庵で休んでいると、抹茶を立ててくれた。無料なのだが、寄付箱があったので些少だが入れておいた。財布が汗でビチョビチョであった。


この十二湖には「日本キャニオン」という景勝地があるというので、更に山道を歩いて行くことにした。
日が傾いて来たので道が少し暗いし、誰もいない。まあ懐中電灯も持ってるし、なんとかなるでしょ♪

どのへんが日本キャニオンたる所以なのか分からないが、とにかく展望できる場所まで来てみた。
が、


えぐれて崩れてしまって、立ち入り禁止になっている。よく見えねぇじゃん!金返せ(ハラッテナイケドネ)!
それでも折角来たので、近づいて撮影してみた。でもよく分からん。

その後はバス通りまで下りて、照り返しのきつい道を海岸まで歩いて見た。渓流で汗だらけの上半身の塩気を拭いたら楽になった。振り返れば日本キャニオンの白い岩肌が見える。

とても色の薄いクロアゲハが舞っている。
歩き疲れたところで、あと僅かの道路案内が見えた。


海が見えるところで丁度列車が通ったので撮影。


あわてて写したのと逆光だったのだけど、疲労感と海に出た安堵感と一日に3本しか通らない列車を写せたので、自分では思い出深い一枚になった。

JR十二湖駅から民宿に電話。「着きましたぁ」
ほどなく宿のご主人が車で迎えに来た。
夕食までは時間があったので、周辺を散歩してみたら、ここは地元の人が知っている隠れた景勝地だった。








残念ながらガンガラ穴には船でしか行かれないそうで、もう誰もいなかった。

賽の河原?

と書いてある丘の上に行ってみる。草むらに何も無い小さな墓石がある。小さい子供の使うおもちゃや着物が散乱している。石の地蔵さんやお堂があって、夕日の間近い時刻の寂しさも手伝って、なんだかとても悲しくなる場所だった。


砂の器で有名になったそうだ。

↓この列車が出てきた手前の尖った岩に開けられた穴は、日本で二番目に短いトンネルなのだそうだ。
発破でふっ飛ばさずに残したところが偉い。


夕食の最中ではあったけど、民宿のすぐ前が海岸なのでしばし見とれる。



夜は肌寒い。虫の声はもうすっかり秋の風情だった。



●8月25日

昨夜の涼しさはどこへやら。気温がグングン上がってくる。これから行く大曲の花火会場はかなり暑いのではないか?

8:16の二番列車に乗って五能線を秋田方面に戻る。
初日に逆光でよく見えなかった風景が、朝だとよく見える。





秋田音頭の歌いだしにある
「秋田名物八森(はちもり)鰰々(ハタハタ)・・・・・・」
で、お馴染みの八森だ♪ハタハタだ♪



そういやこの旅では、行く先々で演歌が頭の中を壊れた蓄音機のようにリフレインしていた。
奥羽本線では、「悲しみ本線日本海」
岩木山が見えれば、「帰ってこいよ」
津軽半島が見えれば、「津軽平野」「越冬ツバメ」「津軽海峡冬景色」
北海道が見えれば、「江差追分」
青森県に入れば、「りんご追分」
そして全編に流れるのは、「みちのく一人旅」

ひょっとして、口に出して歌ってたかも。俺・・・・・

白神山地が遠ざかって、五能線の旅が終わった。



花火の大曲に向かうため、秋田まで戻った。
まだ午前中だというのに、大曲方面の列車は席の奪い合いであった。それでも全員座れたようであったが、大曲に近付くにつれて、どの駅からも大勢乗ってくる。臨時で狩り出されたらしいJRの職員も数名乗っている。ギューギュー詰めになったところで、
「次は大曲ぃ〜」

大曲は平野の真ん中の小さな都市で、周囲は一面の稲穂で満ちていた。
小さな駅にドっと吐き出される乗客。跨線橋から見ていると、次々と臨時列車が到着し、大勢降りて来る。


大曲の花火を見たかったら、車かツアーで行くべき!

悟った時にはもう遅い。今夜の宿である盛岡に着くのは深夜、日を跨ぐことになるだろう。駅前のコンビニでレジャーシートとパンを買って、場所取りの篭城に備える。

会場まで徒歩2kmくらい。会場に着いたのは午後1:30頃。
無料の場所はもう殆ど残っていない。予想気温33度。暑い!


一人分の場所は確保するのは容易だった。終了後、駅までの逃げ道に一番近い場所にシートを敷いて、雨傘で日陰を作りながらじっと待つ。ひたすら待つ。暑い。ひたすら日没を待つ・・・・・。



救急車がひっきりなしに走っている。そりゃそうだろうよ。これだけ暑いと熱中症で担ぎ込まれる人も多いだろう。会場アナウンスも「水分をしっかり取れ」と言っている。かき氷屋には長蛇の列ができている。
会場には洪水のように人がやってくる。

で、肝心の花火はどうであったかと言えば、そりゃもう一流の花火師の競技会なので素晴らしかった。



難しいはずの五芯玉なんて、もう普通に打ちあがってしまうのだ。観客も目が肥えているらしく、ちょっとでも球の形が崩れていると拍手は起きない。


ちなみに全ての花火が、変化を楽しむものばかりで、一瞬を切り取るカメラでは再現が困難であることを思い知らされる。従って殆ど撮影しなかった。というかできなかった。

規模だけを比較すれば、長岡の花火の方が超大型のが上がるので、そちらをお勧めする。大曲では花火師のストーリーを鑑賞するものと思えばいい。


フィナーレが近付いた。ってか、時間を大幅に過ぎていて、列車に間に合わない。
どうも煙が無くなるのを待ってから次の花火を上げるので、間を取り過ぎているかららしい。
フィナーレが始まる前に駅に向かって走った。振り返ると会場の幅500mいっぱいに大型花火が炸裂している。何度も後ろを振り返りながら駅に着いてみると、既に臨時列車を待つ長い列ができていた。
幸いここでも一人の強みで、席を確保できた。

大曲を出発すると、平行して走る国道は既に長い列がどこまでも続いている。盛岡に着いたのは深夜だった。

明日はひたすら東京に向かって、各駅を乗り継いで行く。